適正な長期修繕計画は、建物維持保全工事費のトータルコストを削減します。
長期修繕計画のケース別メリット | |
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□長期修繕計画のないケース |
新築以来、保全修繕費用は必要に応じて拠出。概ねの大規模修繕時期は想定していないか、概ねの時期を想定しているが、予算措置を講じていない。 → 建物や建材は年月を経ることで劣化します。予防あるいは軽微な故障の方が、重篤な故障に至った場合に比して安価に手当できます。劣化の進行は現地調査で捕捉でき、工事の時期や予算が事前に算段できます。 |
□新築時の長期修繕計画の運用中のケース |
分譲マンション等で、新築時に販売会社が策定した計画があり、現在その内容のまま運用中。 → 運営が始まった時期が、2008年以前の長期修繕計画ガイドライン策定前(下図)なら、積立金が不足することがあります。それは、 ・運用効率が優先された計画内容である ・現地調査による劣化進行程度を反映していない。 などが原因です。 現地調査による修繕時期や費用の想定を行い、国土交通省の定めるガイドラインに則った長期修繕計画と比較検討して、最も効率的な費用配分が可能となります。 |
□大規模修繕工事実施済みのケース |
大規模修繕工事で現地調査結果および工事施工範囲や工事費が把握できている。次回大規模修繕工事へ向けて準備中である。 → 現地の経年劣化程度や補修工事費の「数量」「単価」が算出され、前回の工事範囲や工事範囲外が確定していることは、長期修繕計画をさらに将来に活用できるための、見直しのチャンスです。各種中間補修工事や点検補修工事を加えて、中期修繕計画の策定ができれば、将来に向けて保全工事費全体を圧縮できる場合もあります。 |
策定のための要件
長期修繕計画に必要な要件は、次の三つです。
1.新築時図面や通知書報告書等のほか、修繕履歴等の記録
建築確認通知書および検査済み証、あるいは新築工事の記録である竣工図書、これまでに行われた各種定期報告書、修繕工事の記録など。
2.建物全体おおび各部位の数量や面積
修繕の対象となる、建物全体あるいは各部位の数量・面積。
これらは修繕工事費算定の根拠となります。これが伴わない「長期修繕計画」では信頼度が低下します。
これらは修繕工事費算定の根拠となります。これが伴わない「長期修繕計画」では信頼度が低下します。
3.現地調査
建物の修繕は、故障や劣化程度によって、その工事内容や費用が変化します。建物の故障は、各々の建物で異なりますし、事情も違います。できるだけ正確で効率的な長期修繕計画には、現地の調査が不可欠です。
検討基準<国土交通省長期修繕計画との比較検討>
国土交通省が、長期修繕計画のガイドラインを2008年に策定しています。それまでは改修頻度など各社各団体の任意でしたが、計画の構成方法も含めて標準化されています。この計画が目安になります。
ただし、このガイドラインは策定時に10年超(つまり1998年品確法制定前)の旧来性能の建材の耐久性を実在サンプルとしているため、現在の修繕工事での建材耐久性に見直さないと、計画に無駄が生じます。
ただし、このガイドラインは策定時に10年超(つまり1998年品確法制定前)の旧来性能の建材の耐久性を実在サンプルとしているため、現在の修繕工事での建材耐久性に見直さないと、計画に無駄が生じます。
<国土交通省長期修繕計画との比較検討>
現在の(あるいは見直し後の)長期修繕計画が、国土交通省ガイドラインによる計画とどの程度の差があるのか比較検討することで、各々の計画のグレードや妥当性が判断できます。
弊社では、長期修繕計画策定時には、次のような比較グラフを用いて理解を得やすくしています。
弊社では、長期修繕計画策定時には、次のような比較グラフを用いて理解を得やすくしています。
長期修繕計画策定・見直しのメリット
1.修繕積立金の根拠算出
必要な修繕積立金の、算出根拠がわかります。
長期修繕計画は30年以上に亘る長期の計画のため、算出根拠の明示がないと、当該年度の工事費の調整ができなくなります。
長期修繕計画は30年以上に亘る長期の計画のため、算出根拠の明示がないと、当該年度の工事費の調整ができなくなります。
2.修繕積立金の予算配分と時期の確定
いつ、どの程度の予算が必要なのか。
壁の塗替えや外壁の全面打診調査、あるいは設備の更新時期など事前に予測できるので安心。
また突発的に生じた故障の補修は、計画上どの位置付けにあるのかが判明しますので、その補修費拠出の是非が判断できます。
壁の塗替えや外壁の全面打診調査、あるいは設備の更新時期など事前に予測できるので安心。
また突発的に生じた故障の補修は、計画上どの位置付けにあるのかが判明しますので、その補修費拠出の是非が判断できます。